夫と私

よくあるタイプの女オタクの私とサッカーが好きな夫の話

聞けばよかった

中学高校と吹奏楽部に入っていた。中学はそんなに強い部でもなく、人数も少なかったが、音楽の先生が指導をしてくれていた。「あいさつは普通の大きさの声で普通にしなさい」「長時間練習をしても集中できなければ効果は上がらないから短時間にする」といったことを言われた覚えがある。いわゆる文化系運動部と言われる雰囲気ではなかった。少し神経質なところもあったが、基本的には穏やかで、優しさを押し付けてこないドライな雰囲気が結構好きだった。

その先生のおかげで高校に入っても吹奏楽を続けようと考え、入部したが、高校の部活動の指導は結構変わっていた(それが普通の部活動なのかもしれないが)ので、最初面食らった覚えがある。

初めての休日練習の際、朝は9時集合と言われたのでちゃんと9時に学校に到着するようにしたら、先輩から「9時に合奏が始められるようにしてという意味」だと注意されてしまった(つまり、30分くらい前には到着してウォームアップをしておけということ)。じゃあそう言ってくれればそうしたのにと思い釈然としない気分だったが、怒る瞬発力がなかった(今もない)ので黙って従った。次年度以降、自分に後輩ができた際にはちゃんと「集合時間と言われた時間の30分くらい前に来た方がいい」と伝えるようにした。なんでその程度のことを言ってもらえなかったのか、今でも理解に苦しむ。

そして、そういう風に生徒に(過剰に)時間を守らせるくせに、顧問はいつまでも練習を切り上げないのだ。例えば17時終了と予告されていても平気で1時間とかオーバーする。まだ高校生なので親が心配するかもしれないし、第一私は時間を守ってもらえないのが嫌いなので非常に不満だった。ただ、私以外の人はそれで困っているようにも怒っているようにも見えなかったので、反対に私が怒られることになったら嫌だなと思ってこれも言えずじまいだった。

そんな調子で、子供のころは「言ったら怒られるかもしれない」「言ってもどうせ無駄だから」と考えて意見を言わないことが多かった。今となっては、相手の態度を変えさせるところまでは行かなくとも、理由くらい聞けばよかったと強く思う。聞けば多少納得できる部分もあったかもしれないし、やっぱり納得できないから辞めるという選択もできたかもしれない。

質問をするのは相手のことを知りたいからであって、質問を諦めるのはコミュニケーションに対する諦め、相手に対する諦めという感じがする。自分の立場が弱いと感じていたこともあるが、何を言っても無駄だからというのは相手を馬鹿にしている面もあると今となっては思う。

最初から怒るのではなくて、単に気になったのだけど……という感じで聞けば普通に答えてくれたかもしれないのに、もったいないことをした。